田んぼの蛙ももう消えた……。

僕の家の前には、広い広い水田地帯が広がっています。
家に隣接する農業用水路には、僕が子供の頃、草が生い茂り、小魚がいて、蛙がいて、ザリガニがいて、そしてホタルが毎年たくさん見られました。
夏の夜の蛙の大合唱とウシガエルの重低音の合いの手、掌のホタルの明滅……すべてが忘れられません。
そこは、全面コンクリ化され、草が消え、ホタルが消え、蛙が消え、田んぼのカブトエビも消え、思い出したように異常発生するザリガニだけが、今、残された生体反応の全てです。
小魚釣りのおじさんも少年も消え、今は、ザリガニが異常発生したときだけ数えるほどの子供が網を持って自転車に乗ってやってくることがせいぜいのところです。
普段の水位も下がってしまい、今はもうブルーギルも空いたニッチに入り込むようなところですらありません。

コンクリ化も当時は良いことばかりと喧伝されていたのでしょうが……僕たち社会は、効率化や利便性と引き替えに、あの時代に何をそぎ落として駆け抜けてきたのでしょう……。

そこには、バス利用派も規制派もない、論理云々抜きの丸裸の郷愁、原風景だけがあります。

共通点は、出発点にあるのかもしれません。